【STORY 川真田紘也】加速度的に飛躍を遂げる「リアル桜木花道」
日本中がバスケに沸いた8月のFIBAワールドカップ2023。当初の練習生という立場から本大会の日本代表メンバーの座を掴み取った川真田紘也は、泥臭くアグレッシブなプレースタイルはもちろん、大会直前に染め直した赤髪などの風貌も相まって「リアル桜木花道」として注目を集めた。
チームの中心選手であるNBAフェニックス・サンズの渡邊雄太、エースの比江島慎とも年齢の壁を感じさせることなく絡み、打ち解けるキャラクターが話題となり、日本代表の中でもアイコン的な存在となっていた。
川真田が日本代表に登り詰めたのは昨季の滋賀レイクスでの飛躍があったからだ。外国籍選手とも当たり負けせず、豪快なダンクをぶちかます。B1でもレギュラー格で活躍できる力を持った稀有な日本人ビッグマンの去就は今オフの一つの注目点ともなっていたが、彼はB2に降格した滋賀レイクスに残留した。
「自分がいる時に降格させてしまった責任を感じている。自分たちの力でB1に戻したい。だから、レイクスに残りました」
派手なプレーやパフォーマンスに目が行きがちだが、川真田の魅力は内に秘めた“おとこ気”である。
バスケットを始めたのは中学1年の時。最初は陸上競技部に入る予定だったが「顧問がいないと聞いて、だったら違う部がいいかな」とバスケットボール部に入った。そして本当は陸上競技部に顧問がいたことが後に発覚する。ちゃんとオチまでつくのが川真田らしいエピソードだ。
中学、高校も強豪校にいたわけではなく、全国大会とは無縁のバスケット人生を歩む。ようやく全国の舞台に立ったのは天理大学時代の全日本インカレだが、2回戦で早々に姿を消してしまう。
「敗戦ばかりを経験してきた」と本人は語るが、これを機に彼のバスケット人生が大きく動き始める。天理大学3年の2020年にU22日本代表候補に選ばれると、大学4年のインカレ終了後に佐賀バルーナーズ(当時B2)の特別指定選手に。そして卒業後にはB1の滋賀レイクスターズ(滋賀レイクス)に加入する。
トントントンと階段を駆け上がるように、川真田は自身のステージを上げていった。
まだ滋賀レイクスでの1シーズン目は、あまり試合に絡むことができず、ド派手な金髪とキャラクターが先行していた。だが、髪を「琵琶湖ブルー」の青色に染めて臨んだ2年目の昨シーズン、中心選手のイヴァン・ブバの怪我による長期離脱もあり、大幅にプレータイムが伸びた。すると、もともと持っていた潜在能力が開花、B1の舞台豪快なダンクを連発するど派手なプレーだけでなく、インサイドでのフィジカルな攻防でアピールを果たし、2023年2月にホーバスジャパンでデビューを果たした。
初めて日本代表合宿に呼ばれた時は、メンバーリストでただ一人だけ「合宿参加選手」と但し書きを付けられた男は、目の前に現れたチャンスを一つずつものにして、日の丸を背負う資格を得たのだ。
敗戦をバネにして成長してきた川真田にもどうしても忘れられない「敗戦」がある。B2降格が決まった昨シーズンの最終戦だ。
「B1残留に向けて勝つのがマストな試合だった京都ハンナリーズ戦。みんなが全力で戦っていたけれど、うまくいかなかった。個人としてもプロとして人生がかかっている試合だったので、これまで味わってきた負けとは感覚が違う敗戦でした」
川真田にとってあの敗戦は、プロとしての生き方を強制的に意識させられた試合だったのかもしれない。しかし、この敗戦も、川真田にとっては大きな飛躍へのバネになっていくに違いない。
川真田紘也 /KOYA KAWAMATA
ポジション:C
身長/体重:204cm/110kg
生年月日:1998年6月16日
出身地:徳島県
経歴
徳島県立城南高校(徳島)-天理大
2020-21 佐賀バルーナーズ(B2)※特別指定選手
2021- 滋賀レイクスターズ/滋賀レイクス
代表歴
2022 FIBAワールドカップ アジア地区予選Window3,4 直前合宿メンバー
2023 FIBAバスケットボールワールドカップ2023 アジア地区予選Window6、本大会日本代表